§ カキの魅力紹介 §
カキは古くからわが国の主要な果物の一つとされ、各地方名産の品種も数多くあります。
ポリフェノールの一種であるタンニンが含まれ、機能性食品としても現在注目を集めています。
育てる・味わう・観る…カキのさまざまな魅力を特集します。

●カキ品種 ●
完全甘ガキ 不完全甘ガキ

早秋(そうしゅう)

太秋(たいしゅう)

禅寺丸(ぜんじまる)
9月下旬から収穫が可能な、極早生の品種。果実の色づきが良く、食味も良好。。
大きな果実をつけ、サクサクとしてジューシーな食感が楽しめる。「グルメのカキ」と呼ばれる。 果実は小さいが、結実が良いのが特徴。雄花をよくつけるので、授粉樹として利用される。

甘秋(かんしゅう)

夕紅(ゆうべに)
名前のとおり、果実の糖度が高くて食味の良い品種。
果皮が赤くきれいに色づく。種子がほとんど入らず、おいしくて食べやすい。


●紅葉を楽しむカキ●
写真は、葉が真っ赤に色づく「錦繍」という品種。紅葉樹として庭に植えられるほか、
葉は日本料理の添え物などに利用される。



カキの魅力と育てる楽しみ
●日本人とカキ
「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」 これは正岡子規の有名な俳句ですが、多くの日本人はカキと言えば、秋の夕方の風景が浮かんでくると思います。わが国では本州から九州まで、いずれの地方でも家の庭先、田や畑の傍らでカキの木が見られます。松尾芭蕉も、「里ふ(古)りて 柿の木持たぬ 家もなし」の句を残しています。わが国の風土に適し、自然と実が成るので、カキは昔から日本でもっとも主要な果物でした。

今では、国内でもっとも生産量の多い果物はミカンですが、大正時代はカキがトップでした。現在ではほかの果物の生産が増え、カキの生産量は、ミカン、リンゴ、ナシに次いで4番目となっています。


●多くの品種を誇る果物

▲日本だけでも1000以上の品種があると言われるカキ。
果実の色や形、大きさ、そして味もさまざま。

カキは、中国、韓国、日本で古くから栽培されてきた、東アジア原産の果物です。

品種は、日本だけでも1000品種以上あります。関東地方の「禅寺丸(ぜんじまる)」、中国地方の「西条(さいじょう)」、静岡の「四つ溝」、山形の「紅柿(べにがき)」、福島の「会津身不知(あいづみしらず)」、富山の「三社(さんじゃ)」、佐賀の「葉隠(はがくし)」、奈良の「御所(ごしょ)」など、各地には必ずお国自慢のカキの品種があります。現在では全国的に栽培されている「富有(ふゆう)」も、もとは岐阜県川崎村で「居倉御所(いくらごしょ)」と呼ばれていた品種でした。それが優れた品種であることが知られ、全国的にまた世界でも栽培されるようになったのです。


●甘ガキ・渋ガキとその食べ方
カキの品種は、甘ガキと渋ガキに分かれます。甘ガキはさらに、「不完全甘ガキ」(禅寺丸、西村早生(にしむらわせ)など)と「完全甘ガキ」(富有、次郎など)とに分かれます。前者は、種子ができたときに多くの褐斑(かっぱん)(ゴマ)が果肉に現れて甘ガキとなるのに対し、後者はゴマが少なく、暖地で栽培すれば種子とは関係なく安定して甘ガキとなります。

不完全甘ガキの品種は、種子が十分にできないと、ゴマがなく渋い部分があります。また完全甘ガキの品種は、寒い地方では渋みが残り、食べられません。

広く栽培されている甘ガキの「富有」も、本来は果実を大きく肥大させたうえに、赤くよく色づいたときに収穫したものが、いちばんおいしいものです。市販のカキの場合は流通期間の日持ちを考えて、やや早採りをしなければなりません。その点、家庭で栽培されるカキならば、ほんとうにおいしい時期の果実を食べることができます。

渋ガキは干し柿にするか、完全に熟させて軟化させて食べる(熟柿(じゅくし))か、エチルアルコールか炭酸ガスを用いて渋みを抜いて食べます。干し柿は、渋ガキの皮をむいて、軒に吊して乾燥させて作ります。

家庭でもできる「渋抜き」
渋ガキを渋抜きして食べるのも、家庭でのカキ栽培の楽しみの一つです。しかし、渋ガキはもともと干し柿として利用されてきたせいか、うまく渋抜きできる品種は、それ程多くありません。ここでは、渋抜きが容易な「平核無(ひらたねなし)」を使った、焼酎による渋抜き法をご紹介します。  まずは「平核無」の果実を用意します。傷があったり、熟度が進んで柔らかくなっている果実は取り除いておきます。ビニール袋に果実を入れ、35%程度の焼酎を新聞紙などに染み込ませて入れた後、ビニール袋を密封します(果実1kgに対し、焼酎8〜10cc程度が目安です)。このとき、袋の中の空気はできるだけ抜くようにするのがコツです。袋に穴が開いていたりすると、うまくいきません。また、焼酎が果実に直接触れると、果実が黒くなることがありますので、注意が必要です。  室温の状態で、通常7日程度で渋みが抜けますが、品種や時期によってはそれ以上時間がかかる場合もあります。

●カキに含まれる栄養
カキの栄養的魅力としては、ビタミンC、A のほか、最近その効果が広く知られているポリフェノールが多く含まれている点があります。

ビタミンCは、甘ガキで100g当たり70mg程度含まれており、これはミカンの約2倍です。200gのカキ1個を食べれば、1日のビタミンCの必要量を満たすことになります。ビタミンAはトマトの4分の1程度含まれ、果物の中ではひじょうに多いと言えます。

また、渋みの本体は「タンニン」ですが、これはポリフェノールの一種です。高血圧の予防効果があるとされているほか、今後の研究でガンの予防効果が解明されることも期待されています。また、酒を飲む前にカキを食べると、悪酔いしにくくなります。ただし、タンニンをとりすぎると、胃腸の中でほかの食物物質などと結合して石を作ったり、閉塞を起こす恐れもありますので、渋いカキは食べてはいけません。


●風土に適し、作りやすい
カキは春に新芽が吹き、5月ごろに緑枝が伸びます。梅雨前に釣り鐘状の白い花を咲かせます。雌雄異花で、雌花は幼果となり、秋になるまで成長を続けます。早生品種では9月末ごろより果実が色づき、成熟します。晩生品種は11月下旬〜12月上旬ごろに成熟します。11月中下旬ごろ、紅葉して落葉します。

モモやブドウ、サクランボなどと違い、カキは雨の多い日本の気候にも適します。かかる病気もありますが、多くはありません。家庭での栽培では、冬の剪定を強くせず、落ち葉を集めて木とは別の場所に埋めておけば、病害が問題になることはあまりありません。

カキの木はなかなか大きくなりませんが、いったん大きくなると少々のことでは弱りませんし、枯れません。幹や太枝・根に養分を蓄えている、貯蓄型の果樹と言えます。カキの根は乾燥には弱いのですが、これもいったん大きくなって根が深く入ると、乾燥で弱ることはあまりありません。

このように、日本の風土に適応しているカキですが、苗木から育てるときには注意が必要です。梅雨どきに植え穴に水がたまってしまうと、根が酸素不足になって伸びなくなり、枯れる場合もあります。排水対策を講じる必要があります。

四季の移り変わりをカキの木とともに感じ、秋を象徴する果実が容易に多く実る、これはカキの家庭果樹としての魅力でしょう。


カキの薬効と用い方
カキは果実だけでなく、葉、材、根からへたに至るまで、薬用あるいは食品として利用価値の高い果樹であると言えます。その代表的な用い方を、いくつかご紹介します。

1.へた(柿蔕(してい)
薬用に用いられるものとして、カキのへたがあります。薬用にするへたは、秋に熟したカキから採取します。食べたあとにへただけを集めて、そのまま日干しにします。このようにへただけを集めて乾燥したものを、生薬の「柿蔕(してい)」と呼んでいます。市販されている柿蔕の中には、がく片が切り取られているものもあります。

カキでもっとも特色のある薬効は、柿蔕をシャックリ止めに用いることです。シャックリは「吃逆」と書き、『図経本草(ずひょうほんぞう)』(1061年)に出てきます。シャックリは、横隔膜や呼吸補助筋肉のけいれん性の収縮によって、声門が急に開かれて音が出る現象です。一般にはほとんど無害で、多くの場合は自然に消失するものですが、ときに頑強に長く続くシャックリには、苦しめられることがあります。たいていの人は経験されていることですが、こんなときには驚かしたり、冷たい水を飲んだり、しばらく呼吸を止めたり、実にさまざまなことを行いますが、このシャックリを止める秘訣として、柿蔕(してい)を煎じて飲むことが昔から知られていました。

シャックリを止めるには、柿蔕の5〜10g(約10個)を刻み、300〜400mlの水を加えて煎じ、半量になるまで煮詰めます。シャックリの発作時に、この煎液を温めて服用します。味にくせがあって飲みにくい場合は、ヒネショウガを少し加えれば飲みやすくなります。効き目は良く、ゲップも止まり、夜尿症にも効き目があります。昔は病院で柿蔕を処方することもありました。


2.柿餅(しべい)と柿霜餅(しそうべい)
柿餅とは、果実の皮をむき、いわゆる干しガキにしたもののことです。柿餅の表面に出てくる、白い粉末状のものは甘く、これを集めたものを柿霜といい、これを加熱してあめのようにしたものを柿霜餅といい、のどの痛み、咳止めに用います。

干しガキは甘味料として『正倉院文書(しょうそういんもんじょ)』(761年)や『延喜式(えんぎしき)』(927年)にも登場します。


3.柿根(しこん)
カキの根を採取し、水洗いして乾燥させたものを柿根と言い、止血の目的で吐血、下血の症状に用います。


会員規約プライバシーポリシー著作権についてお問合せ日本園芸協会
Copyright(C)2003 日本園芸協会 All Rights Reserved.